息子には、苦手なことがたくさんある。
学校の勉強になかなか取りかかれない。
興味のないことには集中が続かない。
毎日決められたことを、同じように繰り返すことも難しい。
けれど、好きなことなら驚くほど集中できる。
自分で調べる。
覚える。
作ってみる。
失敗したら、方法を変えてもう一度試す。
幼いころ、恐竜の名前を次々と覚えていた息子の「好き」は、成長とともに別の分野へ広がっていった。
▶︎ 恐竜博士だった息子|ADHD息子ヒストリー①|興味ドリブンの幼少期
自然の中で「好き」を深めた体験
小学四年生のとき、息子は「早稲田こどもフィールドサイエンス」というプログラムに通っていた。
本物の自然の中で、魚を追いかけたり、化石を探したりする体験型のプログラムだった。
活動内容には、
- 新生代の化石を探す
- 水生昆虫を調べ、川の生態系を考える
- 海の微小生物を採集する
などがあった。
どれも、生き物が好きな息子の興味に合うものばかりだった。
恐竜だけでなく、魚や爬虫類、川の生き物にも詳しかった息子。
教室で説明を聞くだけではなく、実際に自然の中へ入り、自分の目で見て、触れて、考える。
息子は毎回、楽しそうに参加していた。
好きなことを体験する中で、さらに知識を増やしていった。
中学校には入りたい部活動がなかった
小学六年生になり、入学予定の公立中学校の部活動について調べた。
けれど、息子が入りたいと思える部活動はなかった。
「科学部や生物部があったらよかったのに」
息子は残念そうに話していた。
部活動へ入ることだけが中学校生活のすべてではない。
それでも、息子が興味を持てる活動を続けられる場所があればよいと思った。
早稲田こどもフィールドサイエンスのように、好きな科学分野を伸ばせる場所はないだろうか。
実験や観察ができるサークルなども探したが、通える範囲ではなかなか見つからなかった。
そんなときに見つけたのが、ロボット科学教育Crefus(クレファス)だった。
レゴとプログラミングを組み合わせた教室
Crefusでは、レゴを使ってロボットを組み立て、プログラムで動かす。
レゴも工作も好きな息子に、合うかもしれない。
「これだ」
私は直感的にそう思った。
教材には「LEGO Education SPIKE Prime」を使用していた。
レゴでロボットを作るだけではない。
どのような仕組みにすれば動くのかを考え、プログラムを組み、実際に動かして確かめる。
うまく動かなければ、原因を探して修正する。
息子の好きな「作ること」と「試すこと」の両方が含まれていた。
教室を見学すると、息子も興味を持った。
そこで、中学校へ入学する前に、全7回のプレスクールへ通ってみることにした。
学年よりも、息子に合うところから始めた
中学校へ入学したあとも、週に一回通うことを決めた。
最初に選んだのは、小学五年生を対象としたゴールドコースだった。
中学生だから、中学生向けのコースを選ばなければいけない。
以前の私なら、そう考えていたかもしれない。
けれど、理解や作業に時間がかかる息子には、少し前の段階から始めた方が安心して取り組めると思った。
学年に合わせることより、息子が内容を理解し、「できた」と感じられることを優先した。
これは、さまざまな習い事でのつまずきやWISC検査を経験したことで、ようやくできるようになった選択だったと思う。
▶︎ WISC検査で見えた息子の特性|ADHD息子ヒストリー③|特性が見えた日
好きなことなら、失敗してもやり直せる
実際の授業は、決して簡単なことばかりではなかった。
作ったロボットが、思ったとおりに動かない。
プログラムを組んでも、うまくいかない。
何度も試行錯誤することがあったようだ。
それでも、息子は楽しそうに取り組んでいた。
学校の勉強では、分からない問題があると手が止まってしまう。
うまくいかないと、そこで気持ちが切れてしまうことも多い。
けれど、好きなロボットやプログラミングなら、失敗しても別の方法を試すことができた。
好きなことには、トライ&エラーを続ける力が生まれる。
その姿を見て、息子の「好き」は、ただ楽しいだけではないのだと気づいた。
できないことばかりを見ていた
学校生活では、どうしても息子のできないことが目につく。
宿題をしない。
提出物を出せない。
片付けができない。
興味のない授業に集中できない。
周りの子が当たり前にできているように見えることが、息子には難しい。
私はずっと、できないことを何とかできるようにしようとしてきた。
習い事を選ぶときも、
「苦手を克服してほしい」
「将来困らないようにしておきたい」
という気持ちが強かった。
その結果、息子に合わない方法を続けさせ、親子で苦しくなったこともある。
▶︎ 習い事の紆余曲折|ADHD息子ヒストリー④|うまくいかない理由がわからなかった頃
けれど、息子の人生は、できないことだけでできているわけではない。
好きなことについて語るときの知識量。
思いついたものを形にする工作の力。
納得するまで試す粘り強さ。
興味のあることを自分で調べ、深く掘り下げる力。
学校の成績だけを見ていると気づきにくい息子の力が、好きなことの中には表れていた。
「好きなことを伸ばす」だけでは解決しないけれど
好きなことを伸ばせば、すべてがうまくいくわけではない。
学校では、興味のないことにも取り組まなければならない。
日常生活では、苦手でも身につける必要があることもある。
好きなことだけをして生きていけるわけではない。
今でも私は、息子の勉強や生活について悩んでいる。
「このままで大丈夫なのだろうか」と不安になることもある。
それでも、できないことを直すだけでは、息子は自信を失ってしまう。
苦手なことには支援を借りる。
できる方法を一緒に探す。
そして、好きなことや得意なことを大切にする。
その両方が必要なのだと思う。
好きは、息子が前へ進むための力になる
恐竜から始まった息子の「好き」は、生き物、レゴ、工作、飛行機、ロボット、プログラミングへと広がっていった。
興味の対象が変わっても、夢中になると深く掘り下げるところは変わらない。
それは、息子が幼いころから持っていた力だった。
私は長い間、息子のできないことばかりを見ていた。
けれど、困りごとへの支援を受け、さまざまな経験を重ねる中で、少しずつ得意なことにも目を向けられるようになった。
将来、プログラミングが仕事につながるかは分からない。
今夢中になっていることが、ずっと続くとも限らない。
それでも、自分には好きなことがある。
夢中になれるものがある。
工夫しながら形にできるものがある。
その経験は、息子がこれから自分の道を選ぶときの支えになると思う。
好きは、息子が前へ進むための力になる。
これからも、苦手なことだけで息子を判断せず、息子の中にある力を一緒に探していきたい。
ADHD息子ヒストリーを振り返って
幼いころ、恐竜博士だった息子。
癇癪や過集中に戸惑い、小学校では忘れ物や学習面の困りごとが目立つようになった。
WISC検査で得意と苦手の差を知り、通院や投薬、特別支援教室につながった。
習い事では、うまくいかない経験を何度も重ねた。
私自身が限界を感じ、放課後デイサービスという外の支えにも助けてもらった。
振り返ると、私はいつも迷っていた。
これでよいのか分からないまま、息子に必要だと思うことを探し続けてきた。
今も、正解は分からない。
それでも以前よりは、息子を「できない子」としてではなく、得意と苦手の差が大きく、自分に合う方法が必要な子として見られるようになった。
この先も、悩むことはきっとある。
そのたびに、息子のできないことだけではなく、好きなことに向かう力を思い出したい。
ADHD息子ヒストリー
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母の限界と放課後デイサービス|ADHD息子ヒストリー⑤|はじめての外の支え
▶︎ シリーズ一覧
① 恐竜博士だった息子|興味ドリブンの幼少期
⑥ 好きは力になる|見えた「得意」を伸ばす
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